雌ネジ(ナット)が潰れてしまった場合、対処法として挙げられるのがタップでの切り直しです。しかし、切り直し以外にもリコイルやリペアースティックを使用するなど、さまざまな修復方法が存在します。
本記事では、雌ネジの修復方法「切り直し」の詳細や、手作業での切り直し手順、注意点を解説。さらにタップが折れた時の対処法や、切り直し以外の修復方法についても紹介します。ネジ穴のトラブルにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ネジ穴の修復方法|切り直しとは
はじめに、本記事における「切り直し」という言葉の定義について説明します。
ネジには多くの種類があります。代表的なものとして挙げられるのは、金属の表面にらせん状のギザギザが加工された雄ネジ(ボルト)や、雄ネジを受け入れるギザギザ部分を持つ雌ネジ(ナット)です。
ネジのギザギザの部分を削ったり掘ったりする加工を「ねじ切り加工」といいます。ねじ切り加工のひとつとして分類されるのが「タップ加工」です。ねじ切り加工は「ネジを切る」と表現する場合があり、「切り直し」は「再びねじ切り加工をする」という意味で使われることがあります。
雌ネジが潰れた時の切り直し手順
雌ネジが潰れた時の対処法として、金属加工をする工具「タップ」で切り直す方法があります。以下では、手作業で切り直す手順を紹介します。
切り直しの手順①タップハンドルにタップをセットする
最初に、小さな力でねじ切り加工ができるよう専用工具をセットします。手作業の場合は、ある程度力が必要になるので、タップ単体で作業を行えません。
タップの大きさに対して、適切なサイズのタップハンドルをセットするようにしましょう。
切り直しの手順②タップを挿入する
次にタップへ切削油を塗布し、ネジ穴にタップを挿入します。挿入する際は、斜めにならないよう注意しましょう。
切り直しの手順③必要な深さまで切り直す
ハンドタップは、進んだら戻しての繰り返しが基本です。タップハンドルを時計まわりに回し、抵抗が増えてきたら反時計まわりに回しましょう。
切り直しを進めると出てくる金属の粉くずは、その都度排出することが大切です。タップの切削油が切れたら、再び塗布します。必要な深さまで加工できたら完了です。
タップでの切り直しにおける注意点
雌ネジをタップで切り直しする際は、注意点があります。以下の注意点を守って切り直し作業を進めていきましょう。
タップは垂直にする
タップでの切り直しの際は、タップが垂直であることが重要です。タップが斜めだと、ネジ穴が斜めになってしまうだけでなく、タップが壊れたり折れたりする可能性があります。
タップが垂直に立てられているかを確認するには、「スコヤ」や「水平器」を使う方法があります。必ずタップが垂直になっていることをチェックしてから、作業を行いましょう。
切削油はしっかりと塗布する
手作業でタップ加工を行う場合、切削油が必要です。切削油を使わなかったり、量が十分でなかったりすると、切りくずで目詰まりを起こしやすくなります。切削油を給油し、潤滑性を高めながら作業を進めましょう。
タップが途中で折れた時はどうする?
タップがねじ切り加工中に折れてネジ穴が潰れた場合、切り直しで修復する前に折れたタップを取り除かなければなりません。最も確実な方法は放電加工です。
放電加工なら電気の力で溶かすことができるため、折れたタップを綺麗に取り除けます。使用方法は、電極と呼ばれる棒を折れたタップに挿入し、電気で溶かしていくだけと簡単です。放電加工は時間がかかりますが、細かい形状であっても高精度な加工が行えます。タップの切り直しをする前に、放電加工などを利用して確実に折れたタップを取り除きましょう。
雌ネジが潰れた時の切り直し以外の修復方法
雌ネジが潰れた時は、タップで切り直しをする以外に、いくつか修復方法があります。以下では、それぞれの方法について紹介します。
リコイル(インサートナット)で修復する
ネジ穴が潰れた時の修復方法のひとつに、リコイル(インサートナット)を使用する方法があります。リコイルとは、潰れた雌ネジを元のサイズのまま補修できる金属製のワイヤーインサートです。既存のネジ山を再生する役割を果たします。
修復の手順は、まず潰れたネジ穴をドリルで少し広げ、そこにリコイルを挿入するだけと、比較的簡単です。元のネジと同様のトルクがかけられます。
ただし、専用のS型挿入工具が必要です。リコイルで修復する際の工具はリコイルキットとして販売されているので、ホームセンターなどで確認してみましょう。
リペアースティックで修復する
ネジ穴が潰れた時は、リペアースティックを使った修復方法も有効です。リペアースティックは硬化する粘土のようなもので、2つの材料を混ぜると徐々に金属のような硬さになります。もともとは金属の傷や穴を補修するためのものです。
潰れたネジ穴にリペアースティックを詰め込み、その上から雄ネジを締めることで、潰れた部分の隙間を埋められます。リペアースティックを使う方法は工具を使わないため、初心者でも簡単に修復が可能です。
しかし、高トルクが必要な部分にはかけられず、応急処置としての使用が推奨されます。強度が求められる場所で使用するのは、適さないといえるでしょう。
詰め物(金属用・木材用パテ)で修復する
ネジ穴が潰れた時の修復方法のひとつとして、詰め物を使用する方法があります。金属用や木材用のパテをネジ穴に詰め、その上から雄ネジを締めることで補修が可能です。詰め物はホームセンターで手軽に購入でき、簡単に修復できます。
ただし、強く締め付けることが難しく、ネジが緩むたびに再度修正が必要になる可能性があります。扉の取っ手やタンスのつまみなど比較的軽いものには問題ありませんが、重いものを支える箇所や、バイクなどの修復には向いていません。
宮脇鋼管の加工サービス
宮脇鋼管では、タップ加工などのねじ切り加工をはじめ、直切や斜切、鞍型、スリット、開先など鋼管内外への幅広い一次加工を取り扱っています。
さらに豊富な在庫を活かして、ガスネジ(インチ)やPTネジ(テーパ)、PFネジ(平行)、角ねじ等の、あらゆるねじ切りの材料・加工の一括注文に、短納期で対応可能です。
「加工不良の少ない会社に頼みたい」「自社業では限界があるので、高い技術とノウハウを持った会社に依頼したい」とお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
鋼管加工のベストアドバイザー宮脇鋼管へ
宮脇鋼管は、鋼管加工のスペシャリストとして、お客様にとってのベストアンサーを提供いたします。ロットの大小に関わらず即納提案し、加工のすべてを品質管理いたしますのでご安心ください。VE提案から単品図の作成まで実現可能です。
鉄の鋼管をお客様がすぐに使える状態の製品に加工してお届けすることができる新しい加工サービスも実施しております。
- 難しい加工に対応できるか?
- まずは在庫を確認したい
- 鋼材の価格と納期が知りたい
- 詳細な見積もりが欲しい
など、
鋼管加工の総合技術商社として、最新の鋼構造加工システムを提案する宮脇鋼管へお問い合わせください。