金属加工のねじ切り加工に分類される「タップ加工」は、加工する部材や工具によって加工条件が大きく異なり、特に鉄やステンレス鋼などの硬い金属は加工が難しいとされています。
私たち宮脇鋼管のタップ加工は機械による精密な自動加工を採用していますが、設計と実寸に誤差のない高精度な加工を行うには、あらゆる要因を考慮しながら条件を調整していかなければなりません。
そこで今回は、タップ加工時の条件について、数値を左右する要素や回転速度・送り速度・加工深さの求め方、注意点などをご紹介します。また記事の前半ではタップ加工の基礎知識にも触れていますので、タップ加工初心者の方から、計算式を調べたい方まで、ぜひ参考にご覧ください。
目次
【基礎知識】タップ加工とは?用途や種類について
タップ加工とは、タップ(先端にネジ山が切られた円柱形の工具)を使って、鋼管などの金属部品にネジ穴を作る加工方法です。あらかじめ部材に下穴をあけておき、タップを回転させて穴の内側にネジ山を作ります。
タップ加工の用途
タップ加工は主に組み立ての前工程として採用され、例えば構造・配管の場合は、鋼管同士をつなぎ合わせる時や、鋼管と機械部品などをつなぎ合わせる時などに用います。
タップ加工の種類
タップ加工には、部材を削ってネジ山を作る切削式タップ加工と、部材を変形させてネジ山を作る転造式タップ加工の2種類があります。
- 切削式タップ加工:部材を削り取る
- 転造式タップ加工:部材を変形させる
切削式タップ加工は部材を削るので加工時に切り屑が発生しますが、加工条件があまり厳しくないのであらゆる材料・用途で使用できるのがメリットとなります。
切削式に対して転造式タップ加工は部材を変形させる加工方法なので、切り屑が排出されないことがメリットです。しかし、タップが破損しやすかったり、切削式より回転数(トルク)が必要になったりと、加工条件が厳しい側面があります。
関連記事:タップ加工のやり方とは?タップの種類や手順について解説
タップ加工の条件を決める要素
タップ加工の条件を決める要素は、「部材の材質」「タップの種類」「回転数・送り速度」の大きく3つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
条件を決める要素①:部材の材質
金属には、アルミニウムなどの柔らかい材質のものもあれば、炭素鋼などの非常に硬い材質のものもあるので、材質の性質に合わせて加工条件を変える必要があります。
通常、タップごとに適した金属の種類が提示されているので、わからない時はタップのカタログを見たり、メーカーに問い合わせするなどして確認します。
関連記事:アルミのネジ穴・ボルトの強度は?設計と使用のポイント
条件を決める要素②:タップの種類
タップ加工は切削式と転造式の大きく2種類に分けられますが、部材の材質や加工したい溝の形状、穴の形状に合わせてタップを使い分けていきます。そしてタップ加工時の条件は、タップの長さや直径によって算出していきます。
タップ加工の種類 | 溝の形状 |
---|---|
切削式タップ加工 | スパイラルタップ、ポイントタップ、ハンドタップ、管用タップ |
転造式タップ加工 | ロールタップ(油溝付き/油溝なし) |
特に切削式タップ加工の場合、タップの形状によって切り屑が出る方向が変わりますので、切り屑・切粉の排出効率も考えながら適切なタップを選ばなければなりません。
さらに穴の形状については、部材を突き抜けない「止まり穴」と、突き抜ける「通り穴」があり、こちらも切削式については切り屑の排出を考慮した選択が必要です。
穴の種類 | 形状 |
---|---|
止まり穴 | 部材を突き抜けない |
通り穴 | 部材を突き抜ける |
例えばスパイラルタップは斜めにネジ山ができるねじれ溝形状で、止まり穴加工に適したタップとなっています。ただ、こちらも製品ごとに異なりますので、カタログなどで確認し、メーカーの指示に従います。
条件を決める要素③:回転数と送り速度
タップ加工の加工条件は、タップの回転数と送り速度を同期させることが重要なポイントとなります。
タップの回転数とは1分間にタップが回転する回数のことで、送り速度とはタップが移動する速さのことを指します。
そして「回転数と送り速度を同期させる」とは、タップが1回転する間に進む距離を適当な範囲内におさめることを指します。回転数と送り速度が同期されていないと、タップに負荷がかかって破損しやすくなったり、ネジ穴の精度や表面粗さが悪くなったりといった影響が出やすくなるからです。
用語 | 開設 |
---|---|
タップの回転数 | タップが1分間に回転する回数 |
タップの送り速度 | タップが移動する速さ |
またタップ加工では、加工したネジにならって自ら進んでいく「自己案内性」という性質が発生しやすく、これによって機械で設定した内容と実際の加工精度に誤差が出てしまうことがあります。
対策としては、誤差を吸収してくれる部品「フローティングタッパー(シンクロタップホルダー)」を使ったり、食い付き部の逃げ角を工夫したりという方法がありますが、タップの回転数と送り速度を適切に同期することが大前提です。
加工条件の求め方(回転数/送り速度/加工深さ)
タップ加工時の条件は、前述した「回転数(回転速度)」「送り速度」に加えて、「タップの加工深さ」を加えた3つの数値が必要です。
【加工条件の計算に必要な数値】
②:送り速度
③:加工深さ
それぞれの計算式を見ていきましょう。
加工条件の求め方①:タップの回転数(回転速度)
タップの回転数は1分間にどれくらい回転するかで表されます。単位は「rpm」や「min⁻¹」が使用されますが、どちらも意味は同じです。また、回転数は回転速度とも呼ばれます。
そして、タップの回転数は切削速度・工具径・円周率を使って、下記の計算式から求めることができます。
【タップの回転数】
なお、切削速度については製品ごとに決められた基準値があり、メーカーカタログなどにある数値を使います。
加工条件の求め方②:送り速度
タップの送り速度とはタップが1回転する間に移動する距離のことで、単位は「mm/min」を用います。送り速度は、上記①で計算した回転速度と1回転あたりの送り量を使って、下記の計算式から求めることができます。
【タップの送り速度】
1回転あたりの送り量とは、タップが1回転する毎に作られるネジ山の量(mm)のことで、「リード」とも呼ばれます。
また、リードはネジ山1回転あたりの移動距離を表すピッチ(mm)とネジ山の数を掛けることで求められます。
【リード】
1回転あたりの送り量を計算する時、ネジ山の数は「1」なので、「1リード=1ピッチ」となり、特にリードを計算する必要はなく、ピッチの数字をそのまま入れて求めることが可能です。
加工条件の求め方③:加工深さ
加工深さとは、どれだけタップを部材におろすのかを表す数値です。
加工深さは、有効ねじ長さと食付き部長さに1ピッチ分の余裕を持たせて算出します。またこの時、突き出しセンタ付きの場合はその分の長さも足してください。
【加工深さ】
関連記事:タップ加工の深さの限界は?タップを折らない設計と加工のコツ
タップ加工の条件に関する注意点
実際のタップ加工では、上記でご紹介した条件を機械に入力しても、タップが折れたり、精度が悪くなったりと、うまくいかないことがあります。
そのため、計算式で求められた条件が絶対ではなく、試運転で不具合が発生しないか確認しながら、数値の調整を行っていきます。
計算式で求められた数値はあくまで目安
特にタップ加工は設計と現場で乖離が発生しやすい加工の一つですので、私たち宮脇鋼管では、技術者や設計者が密に連携を図りながら、精度の高い加工を目指しています。
宮脇鋼管の加工サービス
宮脇鋼管では、タップ加工などのねじ切り加工をはじめ、直切や斜切、鞍型、スリット、開先など鋼管内外への幅広い一次加工を取り扱っています。
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