「ネジ穴が潰れてネジのグラつきが気になる」「ネジ頭の溝がなめて回せなくなってしまった」とお悩みの方に向けて、今回はなめたネジ穴の修復方法や対処方法についてご紹介します。
雌ネジ(ナット)のタップ加工、溝が潰れた雄ネジ(ボルト)の外し方など、具体的な方法や使用する道具についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ネジ穴は修復できる?基礎知識について
潰れたネジ穴は、業者に頼らず修復することができるのでしょうか。ネジ穴の修復に必要な基礎知識と、ネジ穴が潰れる原因、修復可否について見ていきましょう。
ネジの基本と種類
そもそもネジとは、金属をらせん状にギザギザに加工した部分または工具の総称で、ギザギザした部分を「ネジ山」と呼んでいます。また、ギザギザの部分を削ったり掘ったりする加工を「ねじ切り加工」といい、「ネジを切る」と表現することもあります。
ネジにはいくつか種類があり、代表的なものがボルトと呼ばれている雄ネジ(おねじ)です。雄ネジは棒状の金属にネジ山が加工されています。一方、その雄ネジを受け止めるのが、ナットと呼ばれている雌ネジ(めねじ)です。雌ネジは金属の内側にネジ山が加工されています。
これらのネジは加工方法などでさらに細分化され、使用シーンや用途に応じて使い分けられます。
「ネジ穴が潰れる」とは?
ネジ穴とは一体どの部分を指すのでしょうか。
一般的にネジ穴というと、雌ネジ(ナット)の内側部分か、雄ネジ(ボルト)の頭にある溝を指します。つまり、「ネジ穴が潰れた」「ネジ穴がなめた」というのは、雌ネジの内側のネジ山が潰れているか、雄ネジの頭部の溝が潰れている状況のことを言います。
【ネジ穴が潰れている状態】
①:雌ネジ(ナット)のネジ山が潰れている
②:雄ネジ(ボルト)の頭の溝が潰れている
ネジ穴の修復は、それぞれのネジで異なります。自身でネジ穴の修復を試みる際は、必要な道具の購入を間違えないように注意しましょう。
ネジ穴が潰れる原因と修復について
ネジ穴が潰れる原因は主に6つあります。
【ネジ穴が潰れる原因】
①:締めたり緩めたりを何度も繰り返した
②:ネジのサイズに合っていない道具を使った
③:必要以上に強く締め付けた
④:もともとネジの材質が柔らかい
⑤:錆びや汚れなどの経年劣化
⑥:強い衝撃などで変形した
いずれの場合も修復は可能で、応急処置程度であれば難しい作業も必要ありません。修復に必要な道具はホームセンターなどで購入できますので、まずはネジの大きさや状態など、ネジ穴の修復に必要な情報をまとめておきましょう。
ただし、ネジの状態や、使用されている場所、製品等の用途、ネジの材質によっては素人だと修復が難しいケースがあります。ネジ穴修復の専門業者や、修理に出すことで修復できる可能性もありますが、部品そのものの取り替えを提案されることもあるでしょう。
雌ネジのネジ穴(内側)が潰れた時の修復&対処方法
雌ネジのネジ穴が潰れた時は、ネジ山を補修する方法か、専用の工具を使ってネジ穴自体を新しくする方法があります。ここでは、具体的な方法を5つご紹介していきます。
なお、いずれの方法も応急処置の範囲であり、安全性が確保されるわけではありません。失敗したくない方や、永続的な修復を希望される場合は専門業者に依頼してください。
ネジ穴の修復方法①:ネジ穴に再度タップ加工する
雌ネジの修復方法1つ目は、今あるネジ穴に再度タップ加工を施す方法です。タップとは金属の内部をネジ切りする工具で、先端にある歯を金属に切り込ませて雌ネジを形成していきます。
ネジ穴の修復方法ですが、まず既存のネジ穴に対してドリルで下穴を広げ、そこにタップ加工を施します。この方法であれば、潰れたネジ穴がそのまま使えますし、ドリルとタップさえ持っていれば、新たに特殊な工具や道具を準備する必要がありません。
一方で、元のサイズより大きくタップ加工した場合は、雄ネジもそのサイズに合うものを準備しなければなりません。また、元のトルク(ねじりの強さ)が掛けられないというデメリットもあります。
ネジ穴の修復方法②:リコイル(インサートナット)で補修する
雌ネジの修復方法2つ目は、リコイルを使ってネジ穴を補修する方法です。リコイルとは潰れた雌ネジを元のサイズのまま補修することが可能なワイヤーインサートです。簡単に言えば既成のネジ山のことで、インサートナットとも呼ばれています。
修復方法ですが、潰れてしまったネジ穴を少しだけドリルで広げて、リコイルを取り付けるだけです。比較的簡単に修復できる点と、元と同じトルクがかけられる点がメリットだと言えるでしょう。
デメリットとしては、特殊な工具が必要になる点です。ドリルやタップの他に、S型挿入工具というリコイルインサート挿入の専用工具を準備しなければなりません。必要な道具一式がセットになったリコイルキットが販売されているので、ホームセンターなどでチェックしてみてください。
ネジ穴の修復方法③:溶接で埋めてからタップ加工する
雌ネジの修復方法3つ目は、溶接でネジ穴を埋めてから新たにタップ加工を施す方法です。ドリルで下穴を開け、元のネジ径に合わせてタップ加工を施します。
この方法は、技術と道具さえあれば迅速に対応でき、また素材の強度が上がるという嬉しいメリットがありますが、他の修復方法と比べて難易度が高めです。
ネジ穴の修復方法④:リペアースティック
雌ネジの修復方法4つ目は、リペアースティックを使って補修する方法です。
リペアースティックとは硬化する粘土のようなもので、本来は金属についた傷や穴の補修・補強に使われるのですが、潰れたネジ穴に入れてから雄ネジを締めることで、潰れた隙間を埋めるのに活用することができます。
工具を使用しないので初心者でも修復しやすい反面、高いトルクが掛けられないというデメリットが。あくまで応急処置という位置付けで、強度が必要な場所での使用は控えた方が良いでしょう。
ネジ穴の修復方法⑤:詰め物(金属用・木材用パテ)をする
雌ネジの修復方法5つ目は、詰め物で補修する方法です。
ホームセンターなどで販売されている金属用パテや木材用パテをネジ穴に詰めて、その上から雄ネジを締めます。手軽に修復できますが、強く締め付けることができず、ネジが緩まる度にやり直す必要があります。
例えば、「扉の取っ手のネジが緩くなっている」「タンスのつまみのネジがグラグラする」などであれば問題なく使用できますが、重さがある物を支えるような場所や、バイク等の修復には不向きだと言えるでしょう。
雄ネジのネジ穴(頭部の溝)が潰れた時の対処方法
雄ネジ(ボルト)のネジ穴潰れは修復することが難しいので、外して新しいネジに取り替えるという流れになります。ここでは、溝がなめた雄ネジの外し方について見ていきましょう。
雄ネジのネジ穴潰れ①:輪ゴムをかます
雄ネジの頭のネジ穴が潰れて回せない時は、ネジ穴とドライバーの間に輪ゴムをかましてみてください。ゴムの摩擦によってカムアウト(ドライバーの先端が抜けてしまう現象)が防止できるので、潰れたネジ穴でも回しやすくなります。ちなみに、輪ゴム以外にも薄めのゴムシートが活用できます。
雄ネジのネジ穴潰れ②:ペンチで回す
厚みがあるネジ頭であれば、ペンチでネジをつかんで回すという方法もあります。
雄ネジをつかむための専用ペンチも売られていますので、一般的なペンチで対処できない場合は、購入してみると良いでしょう。
雄ネジのネジ穴潰れ③:ネジ外し専用工具を使う
ネジ頭が平らになっている皿ネジの場合はペンチでつかむことができないので、ネジ外し専用の工具を使います。
ネジ外し専用工具は、「ネジ抜きビット(電動ドライバー)」や「ネジ外しドライバー」といった名称で販売されており、いずれの商品も潰れたネジ穴に対して穴をあけてネジを緩めていきます。
タップ加工なんてできない!ネジ穴の修復で困ったら…
今回は、なめたネジ穴の修復方法についてご紹介しました。タップ加工や溶接は未経験者にとってハードルが高い修復方法ですが、最近では100円ショップなどでも修復用パテが販売されていますので、ネジのグラつきが気になる時はぜひお試しください。
ただし、ご紹介した内容は応急手当に過ぎず、用途や使用シーンに適さない恐れがあります。安全性や資産性を考慮すると、やはり専門業者に依頼するか、修理に出すのがベストだと言えるでしょう。
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