ネジ穴には複数の種類があり、それぞれに適した製品・場所があります。
そこで今回は、雄ネジの頭にあるネジ穴(頭部穴形状)にはどのような種類があるのか、ネジ穴ごとのメリット・デメリットや、用途、使用シーン等を写真付きで解説しています。
どのネジ穴を選ぶべきか迷っている方や、ネジ穴の特徴について知りたい方は、ぜひ参考にご覧ください。
ネジ穴とは何を指す?2種類の捉え方がある
そもそもネジは、「雄ネジ(おねじ)」と「雌ネジ(めねじ)」の2つの要素から成り立ちます。一般的にネジと聞いてイメージするのは「ボルト」とも呼ばれる雄ネジのことで、らせん状のギザギザとした溝が付いた棒状の工具を指します。
一方、その雄ネジを受けるのが雌ネジです。内側にギザギザが付いている工具で、ナットとも言います。
では、ネジ穴とは一体どの部分を指すのでしょうか?実はネジ穴には2種類の捉え方があり、雌ネジ(ナット)の内側の溝を指すケースもあれば、雄ネジ(ボルト)の頭の溝を指すケースもあります。
本記事では雄ネジ(ボルト)の頭にある穴、頭部の穴形状の種類について、その特徴とあわせて詳しく見ていきましょう。
【一覧】ネジ穴(頭部穴形状)の種類と特徴
ネジ穴の種類(頭部穴形状) | ネジ穴の形状 |
---|---|
プラス穴(十字穴) | プラス(+) |
マイナス穴(すりわり) | マイナス(−) |
四角穴 | 四角(□) |
六角穴 | 六角形 |
ヘクサロビュラ | 六角星形 |
雄ネジの頭部穴形状には、主に「プラス穴(十字穴)」「マイナス穴(すりわり)」「四角穴」「六角穴」「ヘクサロビュラ」の5種類があります。それぞれのネジ穴の特徴や、使用される場面についてご紹介します。
ネジ穴の種類①:プラス穴(十字穴)
ネジ穴の種類1つ目は、頭部にプラス(+)の溝がある「プラス穴」タイプです。漢数字の十に似ていることから日本では「十字穴」ネジとも呼ばれていますが、英語圏では1935年にアメリカの技術者であるヘンリー・F・フィリップスによって開発されたことから通称「フィリップス」と呼ばれています。
現在使用されている雄ネジの9割以上がこのプラス穴タイプのもので、日本では自動車メーカーで導入されたことをきっかけに広く普及していきました。プラスネジの登場によりネジ締めの機械化・自動化が実現し、業務効率が急速にアップしたとされています。
プラスネジのメリットは、ドライバーと溝の接地面がフィットするため、強く締め込める点です。また、どの方向からでもドライバーが挿入できるので、狭いスペースや角の部分でも取り回し性が良いという利点があります。
ただし、ネジ穴のサイズに合っていないドライバーで無理に回そうとすると、ネジ穴が潰れて、いわゆるネジ穴がなめた状態になりやすいため、必ずサイズを確認して適切なドライバーを使用する必要があります。サイズが合ったドライバーを使用すれば、カムアウト(ネジ穴からの抜け)が少なく、さらに滑りも軽減されるので、作業効率がアップします。
ネジ穴の種類②:マイナス穴(すりわり)
ネジ穴の種類2つ目は、頭部にマイナス(−)の溝がある「マイナス穴」タイプです。切削加工の一つである「すり割り加工」で作られることから、「すりわり」や「すりわり付きネジ」とも呼ばれています。
また、マイナスネジの歴史はプラスネジより古く、15世紀頃に生み出されたとされています。しかし、マイナスネジはドライバーとの接触面がずれやすく、さらに回しにくいという効率の悪さから、今ではプラスネジだと使い勝手が悪い場所にマイナスネジが使用される傾向があります。
例えば、プラスネジは溝に汚れが入ると取りにくいといったデメリットがあるため、水回りや屋外灯、電車の乗降口などではマイナスネジが使用されています。また、プラスネジと比較してマイナスネジはネジ穴が潰れにくいので、ドライバーを差し込みにくいような細かな部分、特に腕時計などに多く使用されています。
ネジ穴の種類③:四角穴
ネジ穴の種類3つ目は、頭部に四角(□)の溝を持つ「四角穴」タイプです。日本では「スクエアビス」や「四角穴付きビス」と呼ばれることが多いネジですが、英語圏では、1907年にアメリカのピーター・L・ロバートソンが特許を取得したことから通称「ロバートソン」と呼ばれています。
四角穴形状のメリットは、テーパー角(先細りの角度)が少なく、トルク(ねじりの強さ)の伝達力が良い点です。ドライバーが穴の中心にフィットするため、締める際の滑りが少なく、また、摩耗や破損も少ないため、柱と土台を接合したり、柱と横架材を接合したりする際に使用されます。
一方で、ドライバーとネジ穴に角度が付く場面では使用が難しく、さらにビス自体の価格がプラスネジ等に比べて高いといったデメリットがあります。隅打ちのような部分には不向きですが、四角穴ならではの“折れにくい・外れにくい・まっすぐに打てる”というのは大きな利点だと言えるでしょう。
ネジ穴の種類④:六角穴
ネジ穴の種類4つ目は、頭部に六角形の溝がある「六角穴」タイプです。一般的には「六角穴付きネジ」や「六角穴付きボルト」といった名称で呼ばれています。
六角形のネジ穴のメリットは、プラスネジ等と比べて滑りが少なく、確実に締めることができる点です。また、狭いスペースでも取り扱いしやすく、高いトルクをかけても破損しにくいため、自動車部品や電機部品などにも使用されています。
対してデメリットですが、締結時は六角穴ネジ専用の工具(六角レンチや六角ビット)が必要となります。他のドライバーでは代わりが効かないので、紛失してしまうと締結作業が困難になる場合があります。加えて、流通量が多いプラスネジと比較すると、コストが高くなるという点もデメリットとして挙げられるでしょう。
とはいえ、狭いスペースでも歪みや隙間が生まれることなく、しっかりと締め付けられる点は、他のネジ穴にない大きな利点です。
ネジ穴の種類⑤:ヘクサロビュラ
ネジ穴の種類5つ目は、頭部に星形の溝がある「ヘクサロビュラ」タイプです。ヘクサロビュラ(Hexalobular)とは「6つの小葉」という意味で、他にも「ヘックスローブ(6つの耳たぶ)」や「トルクス®(テキストロン・カムカー社の規格)」と呼ばれています。
ヘクサロビュラのメリットは、支点が6つあるので力が分散でき、さらにトルクが中心にかかるため、締結時の滑りが少なく、締め付け作業が容易に行える点です。また、他の頭部穴形状よりも丈夫で損傷しにくく、工具次第で角度を変えて作業することも可能です。
一方で、締め付け作業にはヘクサロビュラ専用のドライバーが必要となります。さらに、日本ではまだ普及率が高くないので、プラスネジに比べると価格が高いのがデメリットだと言えます。
すでにアメリカやヨーロッパなどでは多くの製品に使用されており、私たちに馴染み深いスマートフォンやパソコンといった精密機械の他、自動車、バイクなどに使用されています。
ネジ穴そのもののデザイン性が高いので製品の外観を損なわず、さらにビットのサイズが合わないと簡単に取り外せないので、意匠性や分解防止の観点からも、今後普及していくと予想されています。
用途に合わせてネジ穴の種類を使い分けよう
今回は、ネジ穴(雄ネジの頭部穴形状)の種類と、その特徴についてご紹介しました。ネジ穴にはそれぞれ意味があり、適した使い方があります。製品や使用シーンに合わせて、適切なネジ穴を選ぶようにしましょう。
また、ネジを締めたり緩めたりする際は、破損防止や安全対策として、必ずネジ穴の形状にあったドライバーやビットを使用してください。
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