板金やパイプに施す穴あけ加工は切削加工の一つで、鋼材だけでなく木材などにも行われる代表的な加工方法です。
穴あけ加工は一見単純そうですが、少しの狂いが最終的に大きな不具合を生じさせることもあるため、素材の特性の見極めや慎重な作業が必要です。
今回の記事では、鋼管などに施される穴あけ加工の種類や方法について紹介するほか、穴あけ加工の注意点についてもまとめていきます。
穴あけ加工とは
穴あけ加工とは、ドリルなどの機器を使用してパイプや板金といった鋼材に穴をあける加工方法のことで、材料を削る切削加工の一つです。
穴あけ加工は、金属加工の中では最も使われている加工方法であり、機械類の正常な動作や安定した建築のためにはなくてはならないものだと言えます。
穴をあけるだけの単純そうな加工に思われますが、実は、穴あけ加工の工程で精度の高い出来上がりになっていなければ、後の工程すべての精度に影響が出てしまいます。そのため、精密な作業が必要となる穴あけ作業には、知識と経験、熟練の技が必要です。
穴あけ加工で使用する道具の種類
穴あけ加工と一口に言っても、あける穴にはさまざまな形状があるため、穴あけ加工を施す鋼材によって適切な機械や工具を選び、一番無駄がなく精度の高い出来上がりになる方法をとらなければなりません。
まずは、穴あけ加工でどのような道具が用いられているのか、広く利用されているものをご紹介します。
ボール盤
ボール盤は、金属や木材などの素材に、ドリルを使用して手動で穴あけを行う加工機のことです。
ボール盤の本体は、回転するチャックという部品にドリルやホールカッターといった切削工具を装着して手動で上下させる部分と、テーブルやクランプという素材を固定するための部分に分けられます。
ドリル
ドリルは穴あけを行うための部品で、ドリルが回転することで素材が切削されて穴があけられます。
一般的には、らせん状の溝が付いたツイストドリルが広く利用されますが、穴あけ加工の種類によって、ストレートドリルやロングドリルなど、さまざまな種類のドリルを使い分けて加工を施します。
リーマ
リーマとは、ドリルなどによってあけられた穴を広げながら、滑らかに仕上げるための部品です。ドリル加工後の穴に棒状の部材であるリーマを通すことで、所定の寸法に整えます。
穴あけ加工の種類
穴あけ加工では用途に応じた切削方法で、最も無駄がなく、精度が高い完成品になる方法を選ぶ必要があります。ここからは、穴あけ加工の中でも代表的な5種類の加工方法についてご紹介します。
浅穴加工
浅穴加工とは、ドリルの直径の3倍以下の長さになる穴をあける加工方法です。スタブドリルやショートドリルなどが利用されます。
深穴加工
深穴加工とは、ドリル直径の10倍を超える穴をあける加工方法です。
深穴加工は、浅穴加工と比較すると機械は特殊になり技術も必要となります。深穴用のドリルにはロングドリルやスーパーロングドリルといった全長が長いドリルを使用しますが、通常のドリルと比べて折れやすいため、扱いには細心の注意を払わなくてはなりません。
ソリッドドリリング加工
ソリッドドリリング加工は、未加工の状態の素材に穴をあける際に用いられる加工方法です。浅穴加工の一つで、無垢穴加工とも呼ばれています。
トレパニング加工
トレパニング加工は、主に大径の穴加工に用いられる方法で、材料を円筒状に切削します。切屑が出るのではなく、芯材として残すことができるため、再利用がしやすいと注目されています。
ソリッドドリリング加工と比べるとより少ない動力で穴あけが可能で、深い穴にも対応することができます。
カウンターボウリング
カウンターボウリングは、すでにあけてある穴を大きくしていく加工方法です。
先にソリッドドリリング加工などで小径の穴をあけておき、そこにカウンターボーリングで加工を施すことで、必要としている穴の径まで仕上がり面の精度を調整しながら広げることが可能です。
穴あけ加工をする際の注意点
穴あけ加工は、工具や素材の材質、工具と素材の取り付け方法、機械の能力によって大きく精度が左右されます。
以下の注意点は、穴あけを安全かつ適切に行うために気をつけたいポイントです。
切削条件の調整
穴あけ加工の精度を高めるためには、切削条件を以下の適切な値に調整する必要があります。
- 切削速度(Vc)=ドリル径×3.14×主軸速度×1/1000
- 主軸速度:ドリルの回転速度(rpm)
- 切り込み量:ドリル一枚当たりの送り量(mm/rev)
※mm/revは、ドリルが1回転で何mm進むかを表した単位
特に(3)の切り込み量は、切削後の切りくずの形状に大きく影響してくるためmm/revを低く設定しすぎないよう注意が必要です。
摩擦熱への対策
穴あけ加工時には切削工具で金属を削り取るため、大きな摩擦熱が発生します。この摩擦熱により、工具の変形を引き起こす恐れがあるため、摩擦熱への対策が必要です。
一般的な摩擦熱対策としては、切削熱を低くする手段が有効です。
そのためには、機械加工では切削点に向かって切削油剤を供給して、部分冷却を行います。切削油剤は潤滑性があるため、せん断変形を縮減して、発生熱量を抑制することができるのです。
部材の固定
穴あけ加工時には、穴をあける部材をしっかりと固定しなければ穴位置がずれてしまうとともに、金属に工具が当たった際に工具が破損して吹き飛んでしまう恐れがあります。
図面通りに正確に切削するためには、正しい固定が必要です。
穴位置の寸法設定
切削加工の場合は、特殊な穴あけを除いて概ね以下の手順で加工されます。
- センター穴をあける
- 下穴をあける(ドリル加工)
- 用途に応じ、特定加工を施す(リーマ加工、ネジ切り加工、ザグリ加工など)
特に(1)のセンター穴の位置設定は、後の工程を精度よく行うため非常に注意が必要です。ドリルの位置決め用ガイドとして、ドリルのチゼル(ドリル先端の中心部の刃が無い部分)よりも少し大きめのセンター穴をあけることを想定し、位置を決めることがポイントです。
切屑の除去
切屑は、丁寧に処理ができていないと機械の中に溜り、作動不良を起こしたり製品に傷をつけたりする恐れがあるため、切り屑処理は、穴あけ加工を行う上でとても重要な要素です。
切屑を除去するためには、以下の3つの方法があります。
- 前記で述べた切削条件を整理する。
特に切り込み量を調整し、切屑の形状を小さくすることが必要です。 - チップブレーカーを変える。
旋盤用チップに彫り込まれた溝を、メーカーの工具カタログを確認しながら適切に変更し、切屑を適切に分断する必要があります。 - 振動切削機能を使用する。
振動切削機能付きの旋盤機械を使用し、切屑を適切に分断させることも手段としては考えられます。
パイプや鋼材の形で異なる穴あけ加工
穴あけ加工は、部材の特性を見極めながら行わなければいけませんが、それと同時に注意したいのが鋼材の形状です。鋼材の形ごとに特徴や加工時の注意点が異なるため、それぞれ分かりやすくまとめておきます。
丸パイプ
貫通穴の場合、ドリル加工やプレス加工が手動であると、穴あけの芯々を正確に出すことが難しく、穴がずれてしまう恐れもあります。
また、貫通孔がずれてしまうことで切屑もパイプ内に残り、作業者の怪我の原因となる場合もあるので注意が必要です。
角パイプ
角パイプは、パイプ製造時において、ロール成型後に高周波溶接により部材のつなぎ合せを行います。その際に発生する溶接痕の盛り上がりを溶接ビードと称します。
溶接ビード上に穴あけ加工が生じる場合は、穴の径や位置により部材耐力が低下する恐れがあるため、できる限り溶接ビード上を避けるか適切な補強を行う必要があります。
H形鋼
H形鋼は、建築資材の柱や梁等の長物として使われることが多いため、丸パイプや角パイプに比べ重量があり、穴あけの際に材料を反転させる作業に非常に手間が掛かってしまいます。
またH形鋼は、ウエブ部分(中央の板部分)に穴をあけることが多く、H形鋼を寝かせてフランジを固定し、プレスやドリルで穴あけを行うことが一般的です。
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また、レーザー・プラズマ・ガスによる溶断穴あけと、上面と左右面の3軸方向から3本のドリルにて自動加工を行うドリルソーによるドリル穴あけ、複数のフライスカッターを自動で使い分ける切削加工と、用途にあった穴あけが可能です。
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