
ネジ穴を加工する際、わずかなズレが原因でネジ穴が斜めになることがあります。斜めになった穴は、ネジの機能性や接合強度に影響を及ぼしてしまうため注意が必要です。
本記事では、ネジ穴が斜めになった時の対策方法のほか、ネジ穴が斜めになる原因や斜めにならないための注意点について解説します。ネジ穴が斜めになり困っている方は、ぜひ参考にしてください。
ネジ穴が斜めになった時の対策方法

工場のように専用設備が整っていれば精密な加工はできますが、手動でネジ穴を開ける場合は難しく、穴が斜めになってしまうケースが多々あります。特にタップ加工の際に生じた斜めの穴は、ネジの機能性や接合強度にも影響してしまうでしょう。
以下では、タップ加工の際にネジ穴が斜めになってしまった時の対策方法について紹介します。
まっすぐになるよう再度タップ加工する
ネジ穴が斜めになった場合、まっすぐなネジ穴に修正する方法のひとつが「再度タップ加工を行う」ことです。
まず、斜めになったネジ穴に再びタップを立て直します。再度タップ加工する方法は、軽度の斜め穴であれば、そのまままっすぐなネジ山を作り直すことができ、比較的修正が簡単です。
ただし角度のズレが大きい場合は、再度タップ加工するだけではうまく修正できないケースがあります。そのような場合には大きめのドリルを使い、まっすぐな角度でネジ穴を広げる方法が有効です。最初より一回り大きなネジサイズに変更することで、しっかりとした固定力が得られます。
溶接でネジ穴を埋めて再度タップ加工する
ネジ穴が斜めになってしまった場合、確実に修正する方法のひとつとして「溶接でネジ穴を埋めて再度タップ加工を行う」方法があります。
まず斜めに開いてしまったネジ穴を溶接で一度完全に埋め、平らな面を作り出します。その後、正確な位置と角度を確認してドリルで下穴をあけ、新たにタップ加工を行いましょう。
溶接でネジ穴を埋める方法は、一般的な工具だけではなく溶接機が必要であり、また金属に対する一定の技術も求められます。技術と道具さえあれば対応できますが、他の方法と比べると難易度はやや高いといえるでしょう。
球面座金を使用する
ネジ穴が斜めになった時の対処法として、「球面座金」を使用する方法があります。
球面座金は、凸型と凹型の2枚1組で構成される特殊な形状の座金(ワッシャー)です。使い方はシンプルで、凹型の座金の平らな面を母材(基盤の材料)に、凸型の座金の平らな面がボルトの頭側に来るように組み込みます。ボルトを締め付けると、凹型の球面上を凸型が滑り、自動的にボルト軸に合わせた角度でフィットする仕組みです。斜めになったネジ穴やボルト軸の角度ズレを吸収し、座面が浮くことなくしっかり固定できます。
球面座金の角度補正範囲はメーカーによって異なりますが、一般的には±3度程度のズレに対応可能です。
テーパーライナーを使用する
ネジ穴が斜めになったときの対処法として、「テーパーライナー」を使用する方法も有効です。テーパーライナーは、機械の安定性を保つために、ベースライナーとの間に2枚重ねて設置される薄いくさび形の部材です。テーパーライナーを使用することで、斜めに傾いたネジ穴の角度補正が可能になります。
テーパーライナーは球面座金と同様に角度のズレを補正しますが、場合によっては球面座金より薄くでき、形状を好きな形にすることが可能です。限られたスペースや複雑な形状に合わせやすいというメリットがあります。
ただし、テーパーライナーを使用するには、ボルトの使用箇所ごとに専用のライナーを用意しなければなりません。汎用性にはやや欠けており、コストが高くなりやすい点はデメリットです。
ネジ穴が斜めになる原因と想定されるトラブル

ネジ穴が斜めになってしまう原因の多くは、最初の「下穴を開ける」作業によるものです。下穴をあける際にドリルがしっかりと垂直になっていないと、角度のズレが生じます。わずかなズレであっても、最終的にはネジ全体が斜めになってしまうでしょう。
また斜めのネジ穴にタップ加工を行うと、タップが均等な力で進まず、途中で折れるリスクが高まります。もしタップが穴の中で折れてしまった場合は、残ったタップを取り除くのに手間がかかり、作業全体の遅延や追加コストが発生するかもしれません。下穴を開ける段階での角度確認は、非常に重要です。
ネジ穴が斜めにならないための注意点

ネジ穴をあける際に斜めになるなどのトラブルが起きないよう、注意すべき点について紹介します。
修正は早めに行う
ネジ穴をあける際は、角度が斜めにならないように細心の注意を払う必要があります。特にタップ加工中に少しでも角度がずれていると感じたら、すぐに作業を中断し、早めに修正しましょう。角度のズレが大きくなるほど、あとからまっすぐなネジ穴に修正するのが難しくなり、作業全体の手間やコストが増大してしまうためです。
作業中に少しでも斜めだと感じたら、まず工具を一旦外し、角度を確認します。このタイミングで再度、ドリルやタップを垂直にセットし直せば、簡単に修正が可能なケースがほとんどです。逆に、無理にそのまま作業を続けてしまうと、最終的には工具が破損してしまうといった、大きなトラブルに発展するリスクがあります。
ネジ穴の角度に少しでも違和感を覚えた際は、早めの修正を行うことが効果的なトラブル防止策です。
下穴の径や深さが適切なものを選ぶ
タップ加工でネジ穴を開ける際は、下穴の径(太さ)や深さが適切であることが非常に重要です。下穴の径や深さが不適切だと、加工途中でネジ穴が斜めになるリスクが高まります。
たとえば、タップ加工で下穴の径が小さすぎる場合、タップが穴に入る際に強い抵抗がかかり、加工中に折れてしまうかもしれません。また下穴の深さが足りない場合、ネジの必要な長さを確保できず、取り付け後の強度不足につながります。ネジ穴が斜めになるリスクを防ぐためにも、作業前には下穴径や深さが適切かどうか確認することが大切です。
加工する素材に歪みやキズがないものを選ぶ
ネジ穴をまっすぐ開けるためには、加工する素材自体に歪みや傷がないかを事前に確認することがポイントです。素材に歪みがあると、加工中にドリルやタップが安定せず、角度がズレてネジ穴が斜めになってしまう原因となります。また、表面に傷や凹凸があると、工具が引っかかり、思わぬ方向に進むことで加工精度が落ちるリスクが高まります。
ネジ穴をあける際は、まず素材表面が平らで傷がないかを目視で確認し、少しでも歪みやキズがあれば平滑に整える作業をしてから加工を開始しましょう。このようなひと手間を加えるだけで、仕上がりの正確さが向上し、ネジ穴が斜めになってしまうリスクを減らすことが可能です。
関連記事:金属にネジ穴を開けるには?|手順とタップ加工時の注意点
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