鋼管うんちく

タップ加工時に多い加工不良は?精度を高める5つの対策

2024.10.16
タップ加工時に多い加工不良は?精度を高める5つの対策

タップ加工とは金属などの部材にネジ穴を作る加工方法ですが、加工不良が発生すると、組立てなどその後の工程に影響したり、製品を使用する際の強度・安全性に影響が出たりと、とても慎重に行わなければならない加工です。

そこで今回はタップ加工時に多い加工不良のケースと、精度を高める対策についてご紹介します。また、記事の後半では私たち宮脇鋼管で工夫していることにも触れています。

タップをよく折ってしまう初心者の方から品質管理を担当されている方、タップ加工の業者を探している方まで、ぜひ参考にご覧ください。

【ケース】タップ加工でよくある加工不良と原因

タップ加工でよくある加工不良と考えられる原因について見ていきましょう。

加工不良ケース①:タップの折損・欠け

タップの折損や欠けによる加工不良は、タップ加工で多いトラブルの一つです。特にステンレス鋼や炭素鋼といった硬い金属において頻発しやすいトラブルとなっています。

タップがネジ穴の中で折れたり欠けたりした時は、専用の加工機や工具を使って取り除く必要があるのですが、この時、破片がネジ穴の中に残ってしまうと、タップを通した時に破片がタップに引っかかって再びタップが折れてしまうことがあります。

また、ネジ穴にタップの破片が残ったままだと締め付け不良が発生する恐れもあり、大変危険です。

この他にも、破片によって部品の表面が傷付いてしまったり、取り扱い時にケガをする恐れもあります。

加工不良ケース②:ネジの締め付け不良

「ネジが通らない」「ネジが緩んでしまう」などの締め付け不良は命を巻き込む重大な事故に発展する恐れがあるため、慎重に対応していく必要がある確認項目の一つです。

締め付け不良が発生する原因としては、前述の破片残りの他に、ネジ穴の寸法や位置精度が悪いことも挙げられます。寸法や位置精度の不良はさまざまな要因が考えられるので、可能性を一つずつ確認していかなければなりません。

例えば、回転速度や送り速度などの加工条件、タップ・部品の選定、タップの状態、切削油の選定などを見直す他、熱処理や表面処理を考慮した設計になっているか、下穴に歪みが発生していないなども確認します。

加工不良ケース③:むしれやかじりの発生

むしれやかじりは品質や加工精度を低下させる形状不良です。

タップ加工では、回転させたタップでワークを削る、もしくは変形させてネジ穴を作っていきますが、前者の削っていく方法を採用する時、削り取るというより、むしり取ったような状態になることがあります。そして、このような形状不良のことを「むしれ」といいます。

また、タップ加工時にタップとワークの間に摩擦熱が発生し、タップやワークが癒着して起こる形状不良を「かじり(焼き付き)」といいます。

むしれやかじりは、タップに摩耗や欠けがあったり、切り屑・切り粉がうまく排出されていない時に起こりやすいので、タップをメンテナンスする、切り屑・切り粉の排出処理を工夫するなどで対策していきます。

加工不良ケース④:バリ・カエリの発生

バリ・カエリもタップ加工で発生しやすい形状不良です。

バリ・カエリとは加工時にワークの縁にできる出っ張りのことで、外観が損なってしまう他、取り扱い時にケガをしてしまったり、組み立て不良が発生したりする恐れがあります。

ポイント

バリとカエリの違いって?

バリとカエリには厳密な違いはなく、JISではこの形状不良を「バリ」と表現しています。企業・技術者によって解釈が異なり、例えば、大きなものをバリ、小さなものをカエリという場合や、金属をバリ、樹脂をカエリと呼び分けている場合もあります。

バリ・カエリが発生する原因も、むしれ・かじりと同様に、タップに摩耗や欠けが発生していることや、切り屑・切り粉の排出不良です。タップの形状によって切り屑が出る方向が異なりますので、タップの切り替え時は回転方向の切り替えも忘れないように気をつけます。

タップ加工時の加工不良を減らす5つの対策

タップ加工時の加工不良を減らす5つの対策

次に、タップ加工時の加工不良やトラブルを減らし、精度を高めるための対策について見ていきましょう。

対策①:加工条件を見直す

タップ加工で加工不良が発生した時は、回転速度や送り速度、加工深さなどの条件設定をまず見直します。

生産効率を上げるために回転速度・送り速度を上げたいところですが、回転速度が速すぎるとタップへの負荷が上がりますし、送り速度が速すぎるとタップとワークの摩擦が大きくなって形状不良や精度低下が起きやすくなります。

解決策としては、

  • 入力値がメーカー公開の数値と相違ないか?
  • 回転速度と送り速度が同期されているか?
  • そもそも入力値が誤っていないか?

などを確認してみましょう。

また作業スピードは落ちますが、回転速度と送り速度を下げて、タップとワークへの負荷を下げるという方法も効果的です。不良品の発生が抑えられるので、結果として生産効率の向上に繋がることもあります。

関連記事:タップ加工の条件は?回転速度・送り速度の計算方法や注意点

対策②:タップ・部品を変える

加工不良の原因がタップや加工環境にある場合、タップの種類や部品を変えて試してみます。

例えば、切り屑が巻き付いてしまう時はタップをロングシャンクに変える、ホルダーを細いものに変えるなどで解決する場合があります。

また、ネジ山が欠けたり痩せたりする時はフローティングタッパー(シンクロタップホルダー)を使用するのも効果が見込めるでしょう。

対策③:切削油を変える

切り屑や切り粉の詰まりによる加工不良が発生する場合は、切削油の種類を変えることで解決するケースがあります。

タップ加工は、切削スピードが他の切削加工と比べて遅めなので、切り屑の排出処理がうまくいかず、ネジ穴に詰まったりタップに巻き付いてしまうなどの影響が出やすい加工方法です。

そのため、切り屑・切り粉が排出されやすいように潤滑性の高い切削油を使います。

ポイント

切削油の目的は?

切削油の目的は、「潤滑性・冷却性・抗溶着性」を向上させること。
加工内容や発生しやすい加工不良に応じて、それぞれの特性が強く出る切削油を選びます。

なお、切削油には水溶性切削油と不水溶性切削油があり、タップ加工に適しているのは後者の不水溶性切削油です。水溶性を使用する時は濃度を高めてあげると潤滑性がアップします。

対策④:熱処理・表面処理を見直す

締め付け不良や形状不良が発生する時は、熱処理・表面処理の方法も見直してみてください。

タップ加工は精度がとても大切ですが、熱処理をすると膨張や収縮が起こる恐れがあり、しかも事前に確実な数値を把握することも難しいので、熱処理前後で対処していかなければなりません。

例えば、必要な寸法よりもややオーバーサイズで加工する、下穴だけ熱処理前に入れておいてタップ加工は熱処理後に行う、熱処理後に再加工するなど、状況に応じて判断していきます。

対策⑤:下穴の精度を上げる

下穴径が小さすぎるとタップが折れたり欠けたりしやすく、反対に大きすぎると加工不良に繋がりやすくなります。また位置のずれも、加工が思い通りに進まなくなったり、加工精度が悪くなったりといった影響が出ます。

ドリルで下穴をあける際は、ドリルの刃先が狙った位置からずれないようにワークをしっかり固定し、ワークに対して垂直に作業するように気をつけましょう。

関連記事:「切削加工」とは? どんな種類や特徴がある? 注意したいポイントなども解説

タップ加工時に加工不良を防ぐポイントは…

加工不良を防ぐポイントは…

タップ加工時に発生しやすい加工不良は、作業時のミスや加工条件の設定ミスだけでなく、ワーク・タップ・機械側に問題があったり、そもそもの設計に問題があるケースなど、さまざまな要因が考えられます。さらに、これらの原因が複合的に絡み合っていることもあります。

そのため、一つひとつの作業において、加工不良の発生を防ぐ工夫や設備投入をしていく必要があるのです。

ポイント

【タップ加工時の加工不良を防ぐポイント】

  • 加工不良は設計・工具・機械・技術などさまざまな要因が関係しやすい
  • 一つひとつ丁寧に対策していくことが重要

例えば私たち宮脇鋼管では、操作インプットの際、複数人数でチェックをおこない、ミスが出ない体制を取るなどの工夫をしています。

また、20連のツールレンジャーで下穴とタップ穴を連番でセット出来るので、穴径の間違いも発生しません。

特に最近はどの製造現場でも機械による自動化が進んでいるため、作業による加工不良は発生しにくい傾向にあります。それでも加工不良が頻発する時は、設計と現場が普段から良いコミュニケーションが取れているか?機械の扱い方が間違っていないか?機械の調子は良好か?といった観点を持ってみると良いかもしれません。

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宮脇鋼管では、タップ加工などのねじ切り加工をはじめ、直切や斜切、鞍型、スリット、開先など鋼管内外への幅広い一次加工を取り扱っています。

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