鋼管うんちく

鉄パイプの溶接で注意すべき点は?溶接方法や欠陥対策

2024.07.09

今回は、建築現場の足場などに使われることが多い鉄パイプの溶接について、素材の特徴や主な溶接方法、溶接時に発生しやすい不良・欠陥を解説します。また記事の後半では、鉄パイプとアルミなど、異素材の部品と溶接する際の注意点にも触れていますので、ぜひ参考にご覧ください。

鉄パイプで使用される「鉄」の特徴

純度100%の鉄は錆びやすく、とても脆いため、鉄パイプを含め身の回りで使われている多くの鉄製品は、強度を上げる目的で炭素が加えられています。

そして、炭素の含有量が0.02%未満の鉄は「純鉄」、0.02%〜2.14%のものは「鋼鉄」、2.1%〜6.67%のものは「鋳鉄」と分類され、さらに用途によって細かく種類が分けられています。

名称
純鉄 鋼鉄 鋳鉄
炭素量 0.02% 0.02%〜2.14% 2.1%〜6.67%

炭素の含有量が増えるほど硬度は上がりますが、硬ければ硬いほど脆くなってしまうので、溶接を前提とする場合は炭素の含有量が0.3%以下のSS材(一般構造用圧延鋼材)やSM材(溶接構造用圧延鋼材)を使用するのが一般的です。

とは言え、基本的に鉄はアルミなどの他の素材と比べて歪みが発生しにくいため、溶接しやすい金属だと言えるでしょう。

関連記事:【鉄の種類一覧】鉄鋼や鋳鉄の特徴や加工方法

鉄パイプの代表的な溶接方法

鉄パイプの代表的な溶接方法

鉄パイプの代表的な溶接方法として「TIG溶接(ティグ溶接)」「被覆アーク溶接」「MAG(マグ)溶接」の3つが挙げられます。それぞれの方法や特徴、注意点、コツなどをご紹介します。

鉄パイプの溶接方法①:TIG溶接(ティグ溶接)

TIG溶接(ティグ溶接)とは、アーク放電という放電現象を利用して熱を発生させ、その熱を利用してワークを溶かし繋ぎ合わせる溶接方法です。

TIG溶接は正式名称を「Tungsten Inert Gas」といい、熱によって溶けないタングステンを溶接棒として使うことと、溶接部分に空気が入らないようにアルゴンガスなどの不活性ガスをワークに吹きかけながら行うことが特徴となっています。

TIG溶接は火花を飛び散らせずに溶接できるのも特徴で、鉄パイプだけでなくステンレスパイプやアルミパイプなど、さまざまな素材のパイプ溶接に用いられています。

鉄パイプの溶接方法②:被覆アーク溶接

被覆アーク溶接は、ワークと同じ素材の金属棒に被覆剤(フラックス)や保護剤を塗布し、その金属棒を電極としてアークを発生させて繋ぎ合わせる方法です。塗布した被覆剤や保護剤は、溶接時に一緒に溶けてシールドガスとなり、大気やスパッタから保護する役割を果たします。

ガスを使用して溶接するTIG溶接は、室内などで風の影響を受けないように作業する必要がありますが、被覆アーク溶接は風の影響をあまり受けないため、屋外や風が通るような場所でも作業できるのがメリットだと言えるでしょう。

ただし、被覆アーク溶接はTIG溶接などと比べて溶け込みが遅いので、強度が出にくいのが難点です。溶け込みを早くするために出力電力を上げるという方法もありますが、そうするとビードが綺麗に仕上がりにくくなるという難しさがあります。

なお溶接のコツとしては、溶接スピードを安定させること、そして、視界が悪くなりがちなので溶接する箇所を見誤らないことです。

鉄パイプの溶接方法③:MAG溶接(マグ溶接)

MAG溶接(マグ溶接)とは活性ガスを使用するアーク溶接の一種です。炭酸ガスもしくはアルゴンガスに炭酸ガスを混ぜたものを使うことから、炭酸ガスアーク溶接やCO2溶接とも呼ばれています。

MAG溶接はワークに合ったワイヤーを電極に使うのが特徴で、ワイヤーとワークを溶かしながら溶接していきます。またワイヤーにはワークと同質の素材のみで作られたソリッドワイヤーと、フラックス入りのワイヤーの2種類があり、鉄パイプのMAG溶接ではフラックス入りワイヤーを使用するのが一般的です。

注意点としては、MAG溶接もTIG溶接と同様にシールドガスを使用するため、風の影響を受ける場所での溶接は避ける必要があります。また、化学反応を起こす理由で非鉄金属には使えない溶接方法なので、アルミニウムや銅などとは溶接することができません。

鉄パイプの溶接で発生しやすい不良や欠陥

パイプ溶接の中でも鉄は比較的溶接しやすい素材ですが、溶け込み不良やブローホール、溶接割れといった欠陥がよく見られます。それぞれの影響や原因、対策について見ていきましょう。

溶け込み不良

溶け込み不良とは、設計溶け込みに比べて実際の溶け込みが不足している平面的な溶接欠陥です。溶け込み不良が発生すると、溶接部分の強度を大きく下げる要因となったり、応力集中によって亀裂・破壊の起点となる恐れがあります。

溶け込み不良が発生する原因としては、溶融金属への入熱不足により溶け込み量が不足している、もしくは部分的に溶融金属がワークに溶け込んでいないといった点が考えられるため、開先形状や入熱・電流の値、トーチの扱いなどを見直してみましょう。

関連記事:開先溶接のコツは?開先加工の基礎知識や欠陥の発生原因について

ブローホール・ピット・ピンホール

ブローホールとは溶接部内部にできる空洞で、ピットはその空洞が表面上に現れた溶接欠陥です。また、ブローホールが針先程度の小さなものをピンホールと呼んでいます。

  • ブローホール:溶接部内部にできる空洞
  • ピット:空洞が表面上に現れた溶接欠陥
  • ピンホール:ブローホールが針先程度の小さな欠陥

これらの欠陥は外観が損なわれるだけでなく、疲労強度が下がり亀裂などの起点となったり、最終的に破損を引き起こす原因にもなります。特に腐食しやすい環境においては、著しく信頼性が落ちる欠陥です。

対策としては、溶接前に鉄パイプや溶接棒にある汚れなどを除去しておく、シールドガスの量を適切に保つ、風の影響を受けにくい場所で作業するといったことが挙げられます。

関連記事:ピンホール(孔食)」って何? 配管などの鋼管にピンホールが発生する原因や対策は?

溶接割れ

溶接割れとは溶接部に生じる割れのことで、約1000℃以上の高温度域で発生する割れを高温割れ、200〜300℃より下の低温度域で発生する割れを低温割れ、溶接部を再度加熱した時に発生する割れを再熱割れといいます。

  • 高温割れ:約1000℃以上の高温度域で発生する割れ
  • 低温割れ:200〜300℃より下の低温度域で発生する割れ
  • 再熱割れ:溶接部を再度加熱した時に発生する割れ

溶接割れとは要するにひび割れのことですから、溶接割れが発生した時点で鉄パイプに亀裂が生じている状態となります。どの溶接欠陥も放置は良くないことですが、特に溶接割れは決して見逃してはいけない欠陥ですので、目視や非破壊検査などによって慎重に確認しなければなりません。

また溶接割れの原因はさまざまで、鉄パイプの溶接に関していうと、素材に含まれる炭素量が多かったり、溶接に伴って急激な温度変化があったりといった状況で溶接割れが生じやすくなります。

対策としては、先にお伝えした通り溶接を前提とする場合は炭素の含有量が0.3%以下の種類を選ぶこと、そしてしっかりと予熱して急熱・急冷を防止することがポイントです。

鉄パイプと異素材の部品を溶接する際の注意点

一般的に、溶接は同じ素材・成分でできたワーク同士を繋ぎ合わせるのが基本です。そのため、鉄パイプなど鉄でできた部品は、同じく鉄でできた部品や、鉄を主成分とするステンレス部品などを溶接するようにあらかじめ設計します。

しかし、さまざまな問題で違う素材同士を繋ぎ合わさなければならないことがあり、このような異なる素材・種類同士を溶接することを「異材溶接」や「異種金属溶接」といいます。

異材溶接の対策について

前述した通り、同じ鉄でも含有している炭素の量が異なると溶接条件が変わりますし、鉄とステンレスではステンレスの方がやや融点が低いので、あらかじめ融点が近しい種類の素材を選ぶか溶接棒選びを工夫する必要があるなど、同じ素材・成分を含むもの同士の溶接も、簡単というわけではありません。

これが異素材となると、同じ素材・種類の部品を溶接するより、さらに高度な技術を要します。例えば、鉄の融点は約1500℃ですから、融点が約600℃のアルミニウムと溶接にて繋ぎ合わせることは、通常選択肢から外されます。

とは言え、製品の都合上どうしても異素材を組み合わせる必要がある時は、他の接合方法を検討してみたり、設計段階から他の方法を検討するなどで対処します。

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