今回はパイプ加工の一つである「溶接」についてご紹介します。パイプ溶接の繋ぎ方や溶接前の準備、パイプ溶接のコツ、ステンレスなど素材別の注意点も解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。
パイプ溶接の繋ぎ方【継手の種類】
最初に、パイプ溶接の代表的な繋ぎ方(継手)をご紹介します。
パイプ溶接の繋ぎ方①:突き合わせ溶接
同じ口径のパイプを突き合わせて溶接する方法です。前加工として、溶接面の強度を高めるために、パイプの断面に開先加工を行います。
関連記事:開先溶接のコツは?開先加工の基礎知識や欠陥の発生原因について
パイプ溶接の繋ぎ方②:差し込み溶接(重ね溶接)
突き合わせと同じく同じ口径のパイプを真っ直ぐ溶接する方法ですが、どちらか一方のパイプを拡げて、一方のパイプを差し込む手法となります。
パイプ溶接の繋ぎ方③:斜め切断
同じ口径のパイプを直角に溶接する方法です。溶接前に前加工として斜切を行い、切断面を突き合わせて溶接します。
関連ページ:斜切/加工サービス|宮脇鋼管
パイプ溶接の繋ぎ方④:枝管
パイプに対して、枝管となるパイプを溶接する方法です。前加工として鞍型加工(エグリ加工)を行います。
宮脇鋼管では1991年の屋根開閉式多目的競技場に始まり、最近では日本一のタワー、日本一の観覧車、2020東京オリンピック競技場と著名案件の鞍型加工に携わらせていただきました。
関連ページ:鞍型/加工サービス|宮脇鋼管
関連ページ:重複切/加工サービス|宮脇鋼管
パイプを溶接する際のコツ
溶接は素材によって用いる溶接技法やトーチの送り速度などを変えることが大切です。特にパイプは形状が複雑なことから、作業そのものがしにくく、また穴が開いたり黒ずみが発生しやすかったりと、独特の難しさがあります。
パイプ溶接に難しさを感じている方や、初心者の方は「穴が開かないように注意すること」を考えて作業するのが良いでしょう。
パイプ溶接は穴が開かないように注意すること
パイプ溶接のコツ①:溶接時の電流とトーチの送り速度
溶接電流が高すぎる場合や、溶接トーチの送りが遅くて熱が入りすぎている場合などがあります。また、トーチが母材から離れすぎていても入熱範囲が広がってしまうので穴が開きやすくなります。
溶接がうまくいかない時は、電流や送り速度、母材との距離を見直してみてください。
パイプ溶接のコツ②:仮止め段階で隙間の幅をチェック
隙間が広すぎるとプールにならずに溶けた箇所が離れてしまいます。そして、隙間を発生させないようにするには、仮止めを丁寧に行っていくことです。
特に溶接するパイプ同士の隙間の幅(ルートギャップ/ルート間隔)が重要で、必ず仮止め段階でパイプを一周しながらルートギャップをチェックしましょう。
ルートギャップは材質や口径によって変わり、例えばステンレスは他の素材と比べて縮みや歪みが発生しやすいので、ルート設定はよりシビアに行わなければなりません。
パイプ溶接のコツ③:溶接ポジショナーを使用
溶接ポジショナーは、母材を回転させながら溶接できる作業台です。溶接ビードを途切れさせずに溶接ができるため、特にパイプ溶接によく用いられます。
ポジショナーのメリットはこれ以外にも、溶接作業だけに集中できる点や、溶接スピードが上がるので作業効率が向上する点などが挙げられます。
ただし、母材を取り付ける必要があり、固定されたパイプには使えません。
【素材別】パイプ溶接の注意点とコツ
次に、ステンレスパイプ・アルミパイプ・鋼(炭素鋼)鋼管の各素材について、溶接時の注意点とコツをご紹介します。
ステンレスパイプの注意点とコツ
ステンレスパイプは耐食性と耐熱性に大変優れているため、水や熱による影響が懸念される場面で多く使用されています。一方で、他の金属と比べて放熱性が低いので、切断や曲げなど他の加工と組み合わせる際は、全ての工程を考慮しながら作業を進めるのがコツだと言えるでしょう。
また、厚みが薄いステンレスパイプは溶接時に溶けて穴が開きやすいという難しさがあり、熱の影響範囲が大きくなるTIG溶接は不向きとされています。特に初心者の方やステンレスパイプ溶接の経験が浅い方は、熱の影響範囲が狭く済むレーザー溶接がお勧めです。
関連記事:ステンレスパイプの曲げ加工の特徴や用途、曲げの種類について
アルミパイプの注意点とコツ
アルミパイプは軽量なので、鉄など他の金属の使用が難しい場面で活躍しています。さらに「熱しやすく冷めやすい」という性質を持つことから、建築資材や車などに多く使用されています。
このように活用シーンが多いアルミパイプですが、熱に溶けやすく、表面が酸化皮膜で覆われている特性上、溶接が非常に難しい素材です。
溶接方法としては、酸化皮膜を除去するために交流TIG溶接を用いるのが一般的で、プールができたことを確認してから溶接棒を入れるのがコツとなります。また熱伝導性が高いので、トーチの送り速度を少しずつ早めていくのもポイントだと言えるでしょう。
関連記事:アルミの曲げ加工は割れに注意!アルミニウムの特徴や曲げ方について
鋼(炭素鋼)鋼管の注意点とコツ
鉄に炭素を混ぜた合金からなる鋼(炭素鋼)鋼管は、主に建築構造物に使用されます。
基本的に溶接性に優れていますが、炭素量が多いと粘り強さ(靱性)が減少して脆くなりやすいので、含まれる炭素の量によって溶接条件を決定するのがポイントとなります。
一般的に、溶接を前提とする場合は炭素量が0.3%以下の種類を選びますが、溶接割れなどの欠陥が発生するリスクを下げるために、予熱をしっかりして冷却速度を遅くし、急熱・急冷を防ぐことがコツだと言えるでしょう。
関連記事:鋼管とは?種類や用途、加工方法をご紹介
パイプ溶接の準備で大切なポイント
パイプ溶接は、溶接作業そのものだけでなく、素材や溶接方法に合った環境を整えること、そして前加工の精度も重要です。
【溶接前の準備ポイント】
- 素材・溶接方法に合った環境整備
- 前加工の精度
素材・溶接方法に合わせて環境を整える
溶接は、扱う素材や溶接方法によって準備するものが異なります。
例えばTIG溶接の場合は、下記の道具が必要です。
【TIG溶接に必要な道具】
- 溶接機一式
- アルゴンガスボンベ
- アルゴン調整器
- 保護具
TIG溶接は両手を使って作業しますので顔の保護具はヘルメットタイプがお勧めです。
また、通常はこれらの道具に加えて切削加工・仕上げ加工に必要なグラインダーなども準備します。溶接機に応じた電源も準備しておきましょう。
なお金属を扱うTIG溶接などのアーク溶接は、「粉じん則」という法律にて全体換気装置の設置や休憩設備が義務付けられています。安全に留意して作業を行ってください。
参考:粉じん障害防止規則
前加工の精度
パイプ加工には切断の他にも穴あけ加工やタップ加工、曲げ加工があり、溶接前にした方が良い加工を前加工として施していきます。
この前加工での精度が低いと、どれだけ溶接加工で頑張ってもカバーしきれないことがありますので、前加工済みの製品から溶接を行う場合は、ぜひその加工精度にも着目してみてください。
私たち宮脇鋼管では、図面読解から試作品作成、一連のパイプ加工、メッキ、塗装、そして納品まで立ち合わせていただいており、溶接や組み立てといった後の工程も考慮しながら、また設計者・技術者同士が細やかに連携を取りながら作業を進めています。
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