鋼管うんちく

鋼材とは?特徴や用途、製造から加工方法まで解説

鋼材とは、鉄を精錬して製造されたもので、さまざまな状態に加工され使われています。現代の産業を支えている構造物や設備、工業機器などに使用され、私たちの暮らしの身近なところでも活用されています。
この記事では、鋼材にはどのような特徴があり、製造方法や加工方法でどのように種類分けされ、用途はどういったものがあるかなどを、鋼管加工のスペシャリストでさまざまな鋼材を取り扱う宮脇鋼管が解説します。

鋼材とは

鋼材とは

鋼材とは、建築や土木、機械などの材料とするために、板・棒・管といった状態に加工した鋼鉄のことです。
銑鉄(鉄鉱石を溶鉱炉で還元して取り出した鉄)を、不純物を除去するなど精錬して製造され、 圧延して作られます。
建築や土木の場面で、機械や造船などの大きな構造物に使われることもあれば、家庭の中でも包丁や調理鍋、自動車などでも活躍しています。

鋼材の特徴とは

鋼材は、強度・靭性ともに優れ、品質も安定していることから多くの現場で採用されています。
例えばコンクリートのように、固まり強度が出るまで時間を置く養生期間が不要なため、施工後すぐに使用が可能です。また単位面積当たりの強度も大きいので、部材断面を小さくすることができ、軽量に仕上げることができます。
鋼材は靭性に優れた材料でよく伸びます。伸びるというのは、地震の揺れなどを効果的に吸収することができるということです。揺れなどを吸収することで破断を防いだり、構造物に大きな力が加わっても、鋼材の粘り強さが構造物全体の急激な崩壊を防ぎます。

製造・加工方法によって変わる鋼材

製造・加工方法によって変わる鋼材

鋼材は製造方法、加工方法によって形状や厚さを変え、それによって名称も変わってきます。
ここでは、一般的な製造方法や加工方法をご紹介するとともに、それらがどのような場面で使用されるのか用途も併せてお伝えします。

圧延鋼材

圧延鋼材は、金属をロールなどで押しつぶし圧力をかけて延ばしたものです。金属は力を加えても元に戻ろうとする性質がありますが、限界値を超えると元の形には戻れなくなります。これを塑性と言い、圧延鋼材は塑性加工をした鋼材と言えます。
圧延は鋼の厚さを減らし、均一にするために行われます。圧延には 熱間圧延鋼と冷間圧延鋼とあり、 熱間圧延鋼は高温(900〜1200度)で製造されるのに対して、冷間圧延鋼は室温で製造されます。
圧延鋼材は、用途によりさらに一般構造用圧延鋼材(SS)、溶接構造用圧延鋼材(SM)、建築構造用圧延鋼材(SN)などに分けられます。(SS)のようにアルファベットで表されるのは、鋼種の記号です。
圧延鋼材は必要に応じてさまざまに加工することができるため、アルミ缶、飲料缶から、車のボディー・建材など幅広く使われています。

厚鋼板(あつこうはん)

板状の圧延鋼材を鋼板と呼び、その中でも厚鋼板は、厚さ 3mm以上の鋼板のことを指します。厚板 (あついた) とも言い、厚板圧延機、広幅帯鋼圧延機などを使用して生産します。
材質によって日本工業規格 JISの規格があり、一般構造用、ボイラ用、溶接構造用、圧力容器用、高圧ガス容器用などに区分して規格が設けられています。
厚鋼板の多くは、船舶、橋梁などの主要構造部材としても使われています。

表面処理鋼板

圧延鋼材の内、冷間圧延は、室温や常温の環境下で金属を圧延加工する方法です。
加熱のための設備を必要としないことや、滑らかで光沢のある表面を得られる利点もありますが、常温下での加工のため、加工のために大きな力が必要なことや、酸化しやすく腐食しやすいというデメリットも持っています。
そこで、冷間圧延で加工された鋼板に表面処理を施します。表面を亜鉛、すず、クロム、ニッケルなどでめっき処理することで、錆に強い表面の美しい表面処理鋼板となります。

形鋼(かたこう)

形鋼(かたこう)とは、断面がH形やL形といった形状になっている鋼材です。H形鋼、山形鋼、溝形鋼など、断面の形がその名前についているので形も想像しやすいでしょう。
形鋼は、一定の形の断面をもつように圧延して作られます。さまざまな種類や形状があり、建造物の柱や梁、手すりやビルの窓枠のサッシなど、幅広い場面で活用されています。

鋼材の硬さや強さはどう変わる?

圧延鋼材でもお伝えした、一般構造用圧延鋼材(SS)、構造用圧延鋼材(SN)、溶接構造用圧延鋼材(SM)のアルファベットは鋼種で、鋼材の硬さや強さの違いを表しています。
いずれも頭文字の最初の「S」は、鋼の「steel(スチール)」のSです。

一般構造用圧延鋼材(SS)

SS材の二番目の「S」は、「structure(構造)」のSです。SS材は最も広く採用されている鋼材ですが、建築では主要な部材に用いません。「主要な部材」というのは大梁のことです。大梁はこの後述べるSN材を使います。
鋼材は、強度(硬度)を高めるためには熱処理が必要なのですが、そのためには0.3%以上の炭素量が必要です。しかしSS材は、炭素量が低いため熱処理での強度を高めることはできない鋼材なのです。
一方で、局部的な力が発生するような箇所で使う二次部材にはSS材は適していると言えます。

建築構造用圧延鋼材(SN)

SN材の「N」は、「new(新しい)」のNです。SN材はSS材に代わって使われ始めた比較的新しい材料です。先程もお伝えしたように、大梁に用いられます。
地震などで大きなエネルギーを構造物が受けた時、支える鋼材にエネルギーを受けて変形する領域がなければ、その鋼材は破断してしまいます。つまり、建物の安全性には、変形する力、塑性変形の能力が必要なのです。
SN材は、SS材やこれからご紹介するSM材に比べて、破断に至るまでに余裕がある材料で、現代の建築で安全性を保つ上では欠かせない鋼材です。

溶接構造用圧延鋼材(SM)

SM材の「M」は、「Marine(船)」のMです。元々は、造船用に開発された材料ですが、今ではインフラを支えるパイプライン、発電プラントや産業機械、工業用途などで広く使われています。
SM材は、溶接性に優れた材料です。例えば、梁同士が一体化したように頑丈につながる剛接合にしたいとき、溶接をします。このとき、溶接性が悪いと溶接不良の原因となってしまいます。
大きな力が加わった際に、溶接部のような靱性が低い部分から破壊されてしまいますが、SM材であれば、溶接しても靱性が悪くならないのです。重要な溶接が必要とされる場面では、SM材が使われています。

鋼材の形状

鋼材の形状

鋼材はさまざまな形に成形され、用途に適した箇所で採用されます。ここでは、鋼材にはどのような形状があり、どういった場面で使われているか、広く使用されているものをいくつかご紹介します。

H形鋼(JIS G3192)

形鋼の中の1つH形鋼は、断面がHの形をしており、鉄骨造によく用いられる鋼材です。特に、柱や梁、小梁などの二次部材で使用されます。
また、建築分野以外では、船舶や橋梁などの構造材としてや、岸壁、高速道路などの基礎杭としても適しています。高層ビルや橋の長さ100メートル以上の長大橋などを建設する際には需要がある部材です。

等辺山形鋼・不等辺山形鋼(JIS G3192)

形鋼の1つで「アングル材」と呼ばれることが多く、「L」の形をしている鋼材です。二辺の幅が等しいものが、等辺山形鋼、幅が異なるものが不等辺山形鋼と呼ばれます。
山形鋼には、門や柵の枠などの用途があります。また、建設用にも多く使用されるほか、鉄塔、船舶、産業機械、自動車、鉄道車輌などでも活用されます。

溝形鋼( JIS G3192)

断面が「コ」形に近い形鋼で、一般に「チャンネル材」と呼ばれており、建設、船舶、機械、車輌等の構造機材や仮設材として使われています。
溝形鋼は、背中合わせに組み合わせることで強度を上げることができ、柱や梁材などによく使用されます。他の鋼材と比べて施工性が高いことから、小梁や間柱、耐震ブレース、耐風梁などにも用いられます。

軽量形鋼(JIS G3350)

軽量形鋼は、厚さ4ミリ未満の薄鋼板を冷間圧延することで造られる鋼材です。厚みが薄く自由な成形ができるほか、広く覆うことができるのでさまざまなニーズを満たすことができる形鋼です。
しかし、薄い分、耐久性は少し劣るので、小規模の屋内運動場や校舎、倉庫などに木構造と併用して使われることに適しています。

平鋼(JIS G3194)

平鋼は、厚板よりも小形の、名前の通り平たい鋼材です。「フラットバー」とも呼ばれます。
鉄骨構造用、機械、船舶の構造材に使われたり、 ナットやワッシャ、刃物などの二次製品の加工用の鋼板として対応したりと、幅広く使用されます。

棒鋼

棒鋼は、断面が円形の丸鋼や、断面が正方形や多角形などの棒状の異形鉄筋(異形棒鋼)と種類分けされます。丸鋼は表面に凹凸が無く、異形棒鋼は、表面に突起がある棒状の鋼材です。
棒鋼のほとんどが建設現場で使われ、鉄筋コンクリートに使う「鉄筋」は、異形棒鋼を意味します。

限りある鋼材を大切に

鋼材は、強度や粘り強さを持ち、加工性、導電性があり、他の材料では代替できない特性を持つ素晴らしい材料です。より錆びにくいもの、より強度があるものへと時代とともに進化もしています。
また鋼材は、加工の際に鉄くずが発生しても、高温で溶かし不純物を除去するなどの工程を経れば、リサイクルできるのも魅力的な点です。しかし、その際には二酸化炭素とダイオキシンが大量に発生し、地球環境に悪影響を与えています。
宮脇鋼管はそんな鉄くずロスをゼロにするため、各種長さの鋼管を在庫し、切断加工時のロスを最小限に切断するよう努めています。また、鋼管メーカーから発生する余剰パイプを全て引き受け、溶かすことなく製品化する事業を行っています。
地球環境を守りながら、限りある鉄資源、鋼材を活かしきりたいと宮脇鋼管は考えています。

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